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   <title>AIRSILKY 2 発売のお知らせ</title>
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   <updated>2008-10-09T06:31:10Z</updated>
   
   <summary>ついに発売！！　AIRSILKY 2 右から開くと、写真集+短編小説集  ・漂白...</summary>
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      <![CDATA[ついに発売！！　AIRSILKY 2

<a href="http://www.fuweb.co.jp/nigokore/INU_6109.html" onclick="window.open('http://www.fuweb.co.jp/nigokore/INU_6109.html','popup','width=800,height=531,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://www.fuweb.co.jp/nigokore/INU_6109-thumb.jpg" width="320" height="212" alt="" /></a>

<strong>右から開くと、写真集+短編小説集 </strong>

< 収録小説 >
・漂白 
・２つの夜を見つめる早朝 
・満月前夜のプレイボール 

※ブログに発表したものに、かなり加筆・修正を加えています 

<写真集>
木寺一路によるモノクロ写真30点ほど 

<a href="http://www.fuweb.co.jp/nigokore/INU_6110.html" onclick="window.open('http://www.fuweb.co.jp/nigokore/INU_6110.html','popup','width=800,height=531,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://www.fuweb.co.jp/nigokore/INU_6110-thumb.jpg" width="320" height="212" alt="" /></a>

<strong>左から開くと、2009年スケジュール帳</strong>
 
・カレンダー、スケジュール書き込み機能 
・アイデアスケッチしやすいクリエイター御用達仕様 

<a href="http://www.fuweb.co.jp/nigokore/INU_6112.html" onclick="window.open('http://www.fuweb.co.jp/nigokore/INU_6112.html','popup','width=800,height=531,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://www.fuweb.co.jp/nigokore/INU_6112-thumb.jpg" width="320" height="212" alt="" /></a>

「AIRSILKY 2」 

写真・木寺一路　文・木本和久 

文庫本サイズ/132ページ/オールモノクロ　 

2008年10月26日発売 　1000円（送料無料） 

ご購入のお問い合わせは　

メール　info@airsilky.com　または

FU 　電話093-563-2090　担当　川端  / 荒川 まで]]>
      
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   <title>二つの夜を見つめる早朝</title>
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   <published>2008-07-10T04:17:43Z</published>
   <updated>2008-07-10T04:18:12Z</updated>
   
   <summary>　夜食用のサンドウィッチと缶コーヒーを近所のコンビニで購入した後、僕は家族が待つ...</summary>
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      　夜食用のサンドウィッチと缶コーヒーを近所のコンビニで購入した後、僕は家族が待つ自宅に向かった。なだらかな坂を歩いて上っていく。平均年齢６０歳をはるかに超えている我が町内の深夜４時過ぎは、これから来る朝を待つのでなく、そのまま終息してしまいそうな深遠な静けさも支配されている。僕意外の僕の家族・・・妻と二人の子供たちも例外でなく、毎晩、この時間だけはあちら側の世界の住人となる。あちら側にいる人々と、僕らこちら側にいる人々は交信することは出来ない。携帯電話を没収された恋人のようなものだ。叫んでも叫んでも、すとんと声は吸い込まれてしまう。
　静かに鍵を回し、ドアをあける。深夜４時の我が家は、この時間、あちら側の世界に属している。息を止めて、妻と２人の小さな子供たちが目を覚まさないように静かにゆっくり階段を上がる。２階の廊下を突きあたりが僕の部屋だ。そこは、モンゴルの岩塩とペルーの赤土を混ぜたもので結界を張っているため、この時間のこの家の中で唯一こちら側の世界の時間が流れている。部屋に入り、一気に息を吐き、そして吸う。今夜も無事に帰還出来たことを感謝する。
　窓際に椅子を寄せ、サンドウィッチ、缶コーヒー、携帯電話を５センチほどの窓枠スペースに置く。
　昼間の空と同様、夜空にも色々な表情がある。今夜は、タイプＰⅢと呼ばれる南半球の洋上でよく観測されるタイプのものだ。北半球のちょうど真ん中あたりに位置するこの窓からは、年に２，３度程度のみ見ることが出来る。なんとなく得をしたような気分がして、僕はククット下を向いて笑った。
　５時３９分・・・今日の日の出時間まで、あと２分だ。もう、なんとなく空は地球色を帯びてきている。
　大勢のカラスたちが、寝床にしている下水管から次々と空に現れ、周回し始めた。

　【シュシュッ】

　５時３９分。携帯電話にFM音源を使って自作した着信音が短く鳴った。時を同じくして、あちら側の世界とこちら側の世界を分けていた境界線が瞬時に落ちる。ふたつの世界は、ほんの少しだけ躊躇い、そしてカフェオレボールに注がれるミルクとコーヒーのように柔らかく交じり合っていく。僕は、携帯電話を手に取り、届いたメッセージを開いた。

『おはようございます。点検・保守の完了をお知らせします。今回の陥落地区はありませんでした。来週もよろしくお願いいたします。（二夜公団統括）』

　６年前に受け取ったメールをきっかけに、毎週金曜日の早朝は窓際で空を眺めながら迎えるようになった。あちら側とこちら側の違いは、よく分からない。それを上手く混ぜ合わせることに失敗する・・・つまり、陥落するとどうなるのかのも不明だ。なんでも時計が刻む横軸の時間でなく、縦軸の時間が暴走し飛び散ってしまうらしいんだけど、それが実際どういうことなのか理解出来ていない。ただ、世の中というか世界中に困難な出来事が増えているのは、どうもこのふたつの世界が共存出来ていない地区が増えていることが原因らしい。
　まあ、僕には分からないことだらけだけど、なんとなく世の中に役立っているのかもという予感と期待だけで、６年間続けてきた。ただ、窓の外をじっと見上げるだけでいいのだから、不器用な僕でも何とかなるしさ。
　金曜の朝から始まる新しい１週間が始まった。
　窓を開け、缶コーヒーのプルタブを引っ張り、朝の引き締まった空気と共に飲み込む。
　世界のみんな、おはようございます。 

      
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   <title>木板のピアノ　初稿</title>
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   <published>2008-06-05T03:19:56Z</published>
   <updated>2008-06-05T03:22:46Z</updated>
   
   <summary>漆喰の壁にはめ込まれた1枚の木板。小さな頃からいつも傍にいてくれた木板。わたしと...</summary>
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      漆喰の壁にはめ込まれた1枚の木板。小さな頃からいつも傍にいてくれた木板。わたしと木板は、やっと安住の場所を見つけたのかもしれない。

結婚から5年たち、私たち夫婦は家を建てた。購入したのではなく、建てたのだ。全体像から間取り、ドア1枚1枚のデザインや建具のスケッチなどは、最終的に４百枚を超えた。主人の友人である設計士を中心にセルフビルドに理解ある人々に協力してもらい、週末の休日を中心に2年間をかけて作り上げた。痒みにのたうちまわりながら、床材は漆を幾重にも塗り重ねた。筋肉の走行ラインをはっきり意識出来るほどの筋肉痛になりながら、壁に漆喰を塗り続けた。屋根に登り防水タイルを張りながら見た沈み行く夕陽を見て、トイレの天井を無難な白から燃えるようなオレンジに塗り替えた。
そして、わたしが最もこだわったのが、この木板をはめこむ場所だった。

木板には、所々波打ったラインでピアノ鍵盤がスケール通りに掘られている。今から25年前、９歳になったわたしへの父親からの誕生日プレゼント。兄のプラモデル作りを手伝うつもりが壊してしまったくらい不器用だった父親が作ってくれた音の出ないピアノだ。。
わたしの家は、今思うと仲が良いことだけが自慢の貧乏家族だった。３食の食事に困ることはないけど、時々機嫌を損ねる小さなテレビが我が家の最高級家電で、ビデオデッキやエアコンはなかったし、電話機は黒電話。家族4人分の洋服は、小さなタンスひとつですべてのシーズン分収まっていたし、自分用の部屋というものを誰一人として持っていなかった。
その頃のわたしは、いつも歌っていた。時間割の中で一番楽しみだったのも音楽の時間。音楽の教科書の裏表紙には、ピアノの鍵盤がプリントされていて、その鍵盤を使って日記代わりのオリジナルソングを弾き、家族の前で毎日歌っていた。また、クラスのイベントごとの度にピアノ伴奏をするエイコちゃんという同級生がいた。彼女の誕生日パーティーに呼ばれて行った時、自宅に本物のピアノがあることを知ってびっくりした。「すごいね、いいね。」とエイコちゃんに言ったら、「わたしピアノ大嫌い。おもしろくない。」と悲しそうな顔をしたのにもびっくりした。
家に帰ってから、誕生日パーティーの報告を兼ねた歌を歌った。エイコちゃんのピアノについて歌った。「黒くて立派で音まで出るのにエイコちゃんから嫌われてかわいそう。ピアノさんが歩けるなら、わたしのお家に遊びに来たらいいのにね」という内容の歌だった。小さなわたしはピアノが欲しくてそう歌ったわけじゃない。エイコちゃんに嫌われているピアノがかわいそうで、そのことを無邪気に歌っただけなのだ。わたしは、わたしのピアノ・・・教科書の裏表紙にプリントされたピアノが大好きだった。聞いてくれる家族がいつもいたし、どんなに複雑で難しい曲でも思い通りに弾けたから。
でも、父親の感じ方は、ちょっと違ったらしい。２日後の日曜日の朝、洗いざらしのコットンを身にまとったような柔らかな光に満たされた早朝6時。気配というか、予感というか、なんとも言えない淡いオレンジ色気分で目が覚めた。わたしたち家族4人は、いつも3枚の布団に並んで眠っていた。母親、弟、わたし、父親の順に。目を覚ましたわたしの右側は、いつもどおりの景色・・・弟と母親の寝姿が見える。ところが、左側にいるはずの父親がいない。たしか、仕事は休みのはず。休みの日は、たいてい最後まで寝ているのが父親で、その父親を起こすのがわたしだった。そういえば、すぐ隣の小さな台所から音がする。かさこそ、かさこそ。そおっと起き上がり忍び足。引き戸の隙間から覗いて見ると、父親が食卓の上で何かを磨いている。
「おはよう。」
わたしは、その隙間に顔を押し付けて、なんだか楽しそうな父親の背中に向けて言った。予期してなかったわたしの声に、いすから飛び上がらんばかりに驚いたのが面白くて、わたしはするするとドアを開け、父親の背中に抱きついた。父親の大きな手がわたし全体を持ち上げ、膝の上にすべらせる。膝の上から見た真新しい景色のことをそのとき以来忘れたことなど一日たりともない。そこから見えたのは、木板で作られた新しいピアノだった。不器用な父親が徹夜をして彫り、磨き上げてくれた弦のないピアノ。
「いつかは、ちゃんとしたピアノを買ってあげるからね。」
痛ましげに、誇らしげにカットバンを張った指を照れくさそうに隠して、わたしをきゅっと抱きしめてくれた。

わたしのピアノは、その日から今日までずっとその木板だった。音楽を志す者誰もが憧れる音大を目指し、入学し、卒業もしたが、わたしは父親の膝の上から見たピアノ以外を所有したことがない。音楽室のピアノと、自宅の木板のピアノを毎日弾いた。音楽室のピアノは先生みたいな存在で、木板のピアノは大親友のようなものだ。木板のピアノはいつも応えてくれたし、元気や勇気をくれた。
　また、木板のピアノにも調律が必要になることがある。それは、わたし自身の調律が必要なときでもある。同級生や先輩、後輩、友達・・・身の回りにいる音楽仲間たちは、悲しいかな、結局、戦うべき相手なのだ。時に戦友のような間柄になることもあるけど、それはお互い、ある程度、それも同程度の成功を手に入れたときのみで、それさえも脆く危ういバランスの上に成り立っている関係だ。好きな音楽の世界に身を置けば置くほど消耗していったわたしは、卒後間もなく再生不可能なピアノになってしまった。きりきりに巻き上げれた弦が、はじけ飛んでしまったのだ。わたしは、ピアノ弾きに必要な聴覚や触覚をはじめとするあらゆる感覚を失い、発見されるまでの数日間、木板を膝に抱えてうずくまっていたそうだ。

それからの2年間は、山間にある精神科に入所していた。語弊を恐れずに言うと、そこは、「狂った」人でなく「失った」人が集められた施設だった。塵ひとつない１５平米の白い箱が、医局を中心に１２部屋配置されている。各部屋は、放射状に・・・医局を中心とした時計の文字盤のように円形に並んでいる。新しく入所した人は、12時の部屋にまず入る。同時にそれまで12時の部屋にいた人は1時の部屋に、1時の部屋にいた人は2時の部屋にというように時計回りに移動する。スタッフ以外との関わりを遮断されていたわたしたちが、唯一、自分以外の「失った」人を感じられるイベントだった。逆に誰かが退所すると、その人よりも大きな数字の部屋に入っている人は、反時計回りに部屋を移動することになる。反時計回りに移動した日は、いつもより少しだけ前向きな気持ちになれたものだ。「いつか、わたしも」と思えたから。
そこは、心の自己免疫作用のみで、わたしたち「失った」人を回復させることを第一義とされた。規則正しい生活と、他者からの刺激を極力避けることが何よりも優先された。華奢な鉄格子に囲われた小さな窓から見える空の景色だけが、自分以外のもののすべて・・・そんな場所。施設のスタッフたちも、言葉を発することは一切ない。伝えるべきことがあれば、各部屋に備え付けられたノートを介して伝達される。治療スケジュールに関するものから、他愛のない冗談や天気の話まで、とにかくたくさんのことがスタッフとわたしたちによって書かれる。そのノートは、わたしたちの部屋の移動と関係なく、各部屋にとどまる。つまり、以前の住人によって書かれたものを読めるし、わたしが書いたものも誰かに読まれ続けるわけだ。退所してから気付いたけど、これはとても良く出来たシステムだった。自分のペースで他人のペースを垣間見ることが出来るし、「失った」人々が、「失った」人々に向けたエールのようなものもたくさん書かれていた。「失った」人は、ここで傷ついた羽を休め、一本一本の羽毛を丹念に紡がれていく。　　
ここに入所して1年以上、ピアノを弾くことはなかった。というより弾けなかった。弾きたいけど、弾けないのだ。わたしのピアノに指を置くだけで、嘔吐を繰り返してしまう。入所して1年後の月に一度だけの面会日に、父親にそのことを話すと、にっこり笑って
「ピアノのどこかが調子悪いのかな。ちょっと、見せてもらってもいいかな？」
と言って、施設スタッフに木板のピアノを面会室ロビーに持ってきてもらった。
両手で大切そうに受け取り、手のひらで撫でたり、軽く叩いてみたりしてその感触を確かめながら「よしよし」と呟く。。それは、木板のピアノへの調律だった。わたしのピアノの調律は、父親の役目で、調律後の音はどこまでも伸びていく飛行機雲のようだった。
「これは重症だなぁ。ミのシャープの音が出ないみたいだから。」
そう言うと、おもむろに椅子を蹴飛ばし、手にしていた木板のピアノを床に打ちつけた。何度も何度も何度も。
「ごめんな。ごめんな。こんなもの作ったから、パパがこんなものを作ったから毎日がつらいよね。ごめんな。ごめんな。」
わたしは父親の腰にしがみつき、わたしのピアノを壊さないでと大声で哀願した。騒ぎを聞きつけたスタッフたちが、まず、わたしを父親から引き離した。父親は壊れたおもちゃのように、木板のピアノを打ち続ける。ごめんな、ごめんな、ごめんな・・・グゴッ・・・。両手すべての指が折れているのではないかと思うくらい強く握り締められた木板のピアノは、くの字に折れてしまった。涙なのか、汗なのか、顔じゅうをぐしゃぐしゃにした父親は、照れたように首をかしげてわたしを見た。その表情は、わたしに木板のピアノをプレゼントしてくれたあの朝と同じだった。いや、２０年分刻まれた皺の分だけ、より柔らかくやさしく、わたしを見ていた。ゆっくりと口唇がうごく。ご・め・ん・な。
口唇の動き以上にゆっくりと振りかぶり、満身の力で振り下ろされた。木板のピアノは真っ二つに割れ、父親から離れた木片はゆるやかな放物線を描き、わたしに向かってくる。そべてがスローモーションだった。放物線を描き飛んでくる木片がもともと何だったのか理解出来てなかったわたしは、子供を抱きしめる準備をする母親のように両腕を広げる。1回転、2回転、3回転と回りながら、わたしの元へ迫ってくる木片。その大きさは、回転とともに増していく。わたしの視界すべてが木片で占められた時、父親が丹念に掘り込んでくれた鍵盤たちがはっきり見えた。ぶつかると思って目を閉じた瞬間、わたしの顔を巻き込むように回転した木片は、柑橘系の音をさせて耳を横を擦り抜けていった。大きく前方に広げた手に何かが触れる。懐かしい感触だった。両腕を広げたままのわたしの顔は、走り寄ってきたであろう父親の胸の匂いに抱かれていた。
二人で泣いた。世界中の底が抜けたくらいわたしたちは泣き続けた。泣き続けながら気がついた。ミにシャープはない。出るはずのない音のせいで、真っ二つに折れたピアノはまるでわたしだ。出ない音は、出ないままでいいのだ。不器用なパパは不器用なままだし、わたしもわたしのままでよかったのだ。ミのシャープを追い求めていたわたしは、いつの間にかあるはずのないミのシャープに占拠されてしまっていたのかもしれない。正体のないものに占拠されることイコール失うことでもあることに気づいた。それは『出口のない迷路』でしかない。
わたしは、父親の腕の中でゆるやかに眠りについた。薬が介在する眠りはまるで泥水の中を泳ぐような息苦しさを伴う。しかし、その日の晩の眠りは違った。それはまるで深海に咲いた白百合のようにゆらりゆらりと香る眠り。母親のお腹の中はきっとこんな所なのだろう。コツ、コツ、コツ・・・コトリ。夢うつつなベッドの中、遠くに聞こえる雨音のような心地よい音、そして頬に感じた微かな風で目を覚ました後、また深い深い眠りについた。

次の日、小鳥たちのさえずる音色が、わたしをかたちづくる細胞ひとつひとつをやさしくノックして新しい日の到来を教えてくれた。拭っても拭っても染み出てきていたヘドロのような表皮を拭わずにすむ朝はなんて素晴らしいのだろう。裸以上に裸になったような気分だ。ただ、わたしを侵食していたすべての問題がクリアーになったわけではなかった。わたしの抱えていた問題は、もっと大きく複雑だった。だけど、出口に通じる入り口に立てたことで、止まっていた時間がやっと前に進み始めたのだ。
わたしはベッドから起き上がり、時間を確認するためにドアの方向へ視線を向けた。7時11分。起床の合図である鐘の音がするまで、あと19分。そういえば、父親はあの後、どうしたのだろう？わたしが気を失った後、どうしたのだろう？ここには宿泊設備はないし、辺鄙な山奥にある施設なので近隣にホテルなんてものもない。今日だったら、笑いながらミにはシャープのないことを教えてあげられるのに。あとで、施設のスタッフに尋ねてみよう。
「あれ？」
昨日、折れてしまったはずの木板のピアノが、ベッド脇の小さなテーブルに立てかけられていた。凛々しく瑞々しい立ち姿は、羽を休める渡り鳥のようだった。そっと手をやり、膝の上に乗せた。ちょうど真ん中に位置するミのシャープを中心に一直線に継がれた跡がある。外科手術を受けた背中みたいで痛々しかったが、逆に新しい命を吹き込まれたようにも見えた。目を閉じ、一番低い音から高い音まで人差し指で撫でてみた。
「聴こえる・・・ちゃんと響く。」
わたし自身が変調をきたし始めたときから、ピアノの弦は巻き上げられ続けた。きりきりに引っ張られた弦がさらに巻かれるときの音は今でも忘れることが出来ない。暴走しっぱなしのジェットエンジン。限界まで巻き上げられて弾け跳んだ弦は、永遠にほどくことができそうもないくらいにからまってしまっていた。そんなピアノに昨晩、どんな魔法がかけられたのだろう。誰が、魔法をかけたのだろう。弦が切れ、真っ二つに折れた木板のピアノ・・・どこまでも高く深く響く音色は、小さな頃から聴いているあの音と何一つ変わってなかった。
窓の下に備え付けられた棚の上に木板のピアノを置いてみた。小さな窓から朝の柔らかい光が注がれる。木板のピアノとわたしは、久しぶりに穏やかな呼吸を交わした。大きく伸びをしたまま、両指の準備運動を２度３度繰り返しながら、何から弾き始めようかと思いを巡らせた。そうだ、あの曲を弾いてみよう。とても難解で技巧的だから敬遠されがちだけど、わたしにとっては永遠の課題曲。水彩絵具で心の深層を描くと、きっとこんな感じなのだろうと思われる神秘的な曲。
久しぶりに弾くにはちょっとばかりミスチョイスだったみたいで、なかなか指がついてきてくれなかった。だけど、ミスタッチさえも嬉しかった。木板のピアノの音との再会が何より嬉しかったから。　止まっていた時間が動き出し、その時間を忘れてピアノを弾き続けた。
食事も水も摂らずにひとしきり弾いた後、ボンドとパテで修繕された痕を確かめた。色々な角度から見たり、軽く叩いてみたり、擦ってみたり、匂ってみたり。なんとなく、父親の仕業でないような気がした、なんとなく、なんとなく。その時、椅子から立つ気配を背中に感じた。主治医のM先生の背中。いつからか、M先生が部屋に入ってきていたようだ。わたしが木板のピアノを弾くのをずっと聴いていたのだろうか？
M先生は、ドア脇にかけられているノートに手をやり、胸ポケットから取り出したペンで何かを書いた。わたしの方をちらりと照れたように見てから控えめに右手を上げて合図、そのままM先生の癖である髪の毛をクシャクシャとかき回して、部屋から出て行った。カチャ。M先生のメッセージが書かれたノートは小さくゆっくり揺れている。ユラユラユラリ。わたしは、ノートの振幅に歩調を合わせて、ゆっくり近づいた。ノートを開き、小さく丁寧に書かれているはずのM先生のメッセージを探す。

（気持ちの良い朝のスタートをありがとう。【スクリャービン・ピアノ・ソナタ第７番・白ミサ】かな？間違っていたら、ごめんなさい。）

驚いた・・・その通りだった。ロシア人のスクリャービンが作曲した難解な宗教曲であるこの楽曲を知っていることも驚いたが、木板のピアノで弾いたものを聴き取れる人がいたことに、もっと驚いた。わたしは、こう返事を書いた。

（びっくりしました。その通りです。わたしにとって、この曲をマスターすることがピアノをする上で目標の一つだったのです。今日は、全然駄目でしたけど。）

その日以来、ノートを介してのM先生との会話は、ピアノや音楽の話題ばかりになった。M先生は、オーディオマニアだった。オーディオ好きな人の音楽嗜好は、クラシックかジャズに向くことがほとんどらしく、M先生は前者とのこと。スクリャービンによる楽曲はピアニストによって解釈が多様で、各ピアニストのものを聴き比べるのが楽しいそうだ。

（スクリャービンは、わたしにとって永遠に与え続けられる課題曲のようなものです。）

（それは分かるような気がします。僕は、ピアノを弾けないのですが、聴くのは大好きです。その中でも、スクリャービンの楽曲が録音されたものを聴くのは特に好きです。同じ楽曲でも、ピアニストによって全く違うものになっているからです。）

（スクリャービンの曲は、何も考えずに楽譜どおりに弾くと、とても退屈な曲が多いような気がします。音数が多く、展開も複雑で技術的に難解な曲が多いのですが、それ以上に、楽曲の中に込められた意味や想いがとても深い場所に埋まっているのです。）

（なるほど、それでピアニストごとに違う楽曲のようになっているのですね。うんうん、おもしろい話をありがとう。）

（いえ、わたしが勝手に思っているだけのことですから、スクリャービンからすれば不正解なことかもしれませんよ。）

（解釈すべき大きな余白があるということは、僕にとってとても興味深いことです。そこに向き合うことはつまり、自分と向き合うことなのです。僕がスクリャービンの楽曲が好きな理由は、そこだったのかもしれません。スクリャービンの楽曲自体というより、それを弾いているピアニストの真の姿を感じられるから好きなのかもしれません。）

（それにしても、木板のピアノで弾いたものの曲名が分かりましたね。）

（余白が多い楽曲だからでしょうか？音が聴こえたというより、イメージが伝わってきたのです。）

（どんなイメージなのか、よかったら教えていただけますか？）

（　　　“YES”　　　）

わたしは、ここを出てもやっていけるような気がした。

“YES”が書き込まれた翌日、父親が面会にやって来た。木板のピアノを折ってしまって３ヶ月が経っていた。木板のピアノが修復を施されて、わたしの手許にあることは知っていたようで、何度も何度も謝った。わたしたちは、ここの談話室でのみ会話が許される。
「ごめんな。本当にごめん。お父さん、どうかしていたんだよ、あの時。木板のピアノのせいじゃなくて、お父さんのせいなのに・・・ピアノを憎んでしまったんだなぁ。本当にごめんな。」
「お父さんのせいじゃないよ。うまく言えないけど、誰のせいでもないの。多分、もうしばらくしたら、わたし、大丈夫になるような気がする。今ね、わたし毎日、弾いているの。久しぶりよ、ピアノを弾くことがこんなに楽しいのは。」
「そうか、それはよかった。退所したら、ゆっくり聴かせてほしいな。」
「もちろんよ。それと、先生、聴こえるのよ、木板のピアノの音が。」
父親の横に座っている先生は、いつもの癖・・・髪の毛をクシャクシャとかき回しながら言った。
「とても癒されています。とても、すばらしい。とても、とても、とても感動させてもらっています。」
父親は、席を立ち、直立不動のまま
「ありがとうございます。先生には、どれだけの言葉を重ねても足りません。本当にありがとうございます。なんでも、木板のピアノを修復してくれたのも、先生とのことで。粗末なものですが、わたくしと娘を結ぶ絆のようなものと申しますか、まあ、そういった類の大切なものでございまして。それをあんな風に壊してしまいまして・・・先生は、散らばった木片のどんなに小さなものまで集めてくださり、修復してくれたとのことで・・・本当にありがとうございます。娘が退所しましたら、あらためてお礼にお伺いしたいと思っていたところなんです。いえ、先生さえご迷惑でなければなのですが・・・。」
早口にまくしたてた。多分、自分で何を言っているのか分からなくなってしまったのだろう。やっと、退所した患者がまた押しかけてきたら、先生だって迷惑でしょうに。
先生も席を立ち、髪の毛をクシャクシャとかき回す。片手だけで飽き足らず、両手を使ってかき回す。
「いや、あの、その・・・とんでもないです。とんでもないです。木片をすべて集めたのは、まあ、職業柄と申しますか、すべてのパーツを揃えていって、パチパチ嵌め込んでいくと申しますか・・・こう・・・失われたものを拾い集めていけば、必ず元通りになるものですから。好きなんです、そういうのが。」
そして、何を思ったか、先生はテーブルを半周してわたしの横にやって来た。わたしの顔をじっと見てから、意を決したように父親の方に向き直り、こう言った。
「甚だ失礼で、非常識なのを承知で言わせていただきます。お嬢さんと、お付き合いさせてください。あ、あ、あのよければ、結婚を前提にお付き合いさせてください。」
ガバッと頭を下げる。
何が何だか分からないとは、このことだ。こういう施設で、患者が先生のことを好きになるのはよくあるらしいけど、逆のパターンはあまり聞かない。何よりも、わたしと先生は付き合っているわけでないし、先生からそんな話をされたことも一度もない。わたしは、つま先まで真っ赤になっていくのが分かった。
「よろしくお願いします。」
今度は、父親がガバッと頭を下げた。そして、先生は何も言わずにわたしに向かって、ガバット頭を下げた。
本当に何が何だか分かりません！わたしもガバット頭を下げてしまった。

４ヶ月後、わたしはその施設を退所した。
１２時の部屋からスタートし、時計回りに反時計回りに各部屋を２年間移動し続け、８時の部屋で退所した。
施設から最寄のバス停までゆっくり歩いて３０分。わたしは、M先生と歩いた。
「先生、ここではもう声に出してお話してもいいのですか？」
「もちろん。退所したのだから、何一つ制約はありません。なんなら２４時間話し続けても大丈夫です。」
とは言うものの、それからわたしたちは無言で山を下りた。話したいことはある。聞きたいこともある。答えたいこともある。
４ヶ月前の告白というか、プロポーズは、あの日以来、宙に浮いたままだった。備え付けのノートで尋ねてみようかと何度も思ったけど、結局出来ずじまい・・・ノートは他の誰かが見ることになるはずだから。ドクターと患者のラインを超えることの善し悪しの問題もあるし、先生の立場の問題もある。そして、何よりも恥ずかしい。暗号めいたもので書かれているかもしれないと思い、M先生の書いたものを色々な方向から読み解いてみたりもした。しかし、すべてが徒労に終わった。
わたしたちは、ほとんど人が通ることのないだろう舗装された細い山道を無言で歩き続けた。両脇には、満開の山桜が延々と続く。時折強く吹く春の風は、柔らかな陽光を背景に花びらを遠くに運んでいった。そう言えば、入所したときもちょうど今の時期だったはずだ。
「先生、わたしがここに来たとき、この桜はどうだったんですか？」
「どうって、どういうことでしょうか？」
「わたし・・・ここに来たときの前後の記憶が全くないんです。」
「そうですか。２年前の同じ時期に僕と一緒に歩いているはずです。」
「歩いているはずって、変ですよ。なんか、先生まで記憶を無くしているみたい。」
「ははは・・・そうです。２年前のこの時期の記憶がないのです。」
「おっしゃっている意味が分かりません。」
「・・・僕は、今日まで９時の部屋にいました。そして、今日から８時の部屋に移動するはずです。」
「８時に部屋って・・・わたしがいた部屋のことですか？」
「そうです。今朝、荷物をまとめて出発してきた部屋です。」
「・・・もしかして、先生は・・・。」
「そうです。僕も失ってしまった人間です。ただ、医者の資格は持っています。専門も、人間の心に関連するものです。」
「つまり、先生は、患者であって医者でもあると？」
「そうです。最初は、患者として入所しました。だけど、入所してしばらくすると、施設長に呼ばれて、こう言われたのです。『人手が足りていないから、ケアの手伝いをして欲しい』と。」
「不思議な話ですね。」
「不思議というより、変てこな話です。ケアされるべき人間にケアをしろというのですから。」
「でも、わたしにとって先生は先生でした。失った人であることなんて、微塵も感じませんでした。」
「ありがとう。たった一人の患者から、そう言ってもらえるとうれしいです。」
「となると、先生は今日からどうするのですか？」
「どうするのでしょうね。施設に戻り、荷物を８時の部屋に移動する。それから後のことは、主治医が考えてくれるでしょう。」
「主治医がいるのですか？」
「はい、一応います。いるというか、僕自身が主治医です。」
「不思議な話ですね。」
「不思議というより、変てこな話です。」
　山を降りきると、T字路につきあたる。そこを右に折れて１００歩ほどでバス停に到着した。時刻表を確認すると、ちょうど１５分後にバスは到着するようだ。一日４便だけやって来るバスの３便目。
あと１５分すると、わたしは今までいた場所から切り離される。先生は、その場所に残る。この２年間を締めくくるはずの１５分間、わたしたちは無言で並んでいるだけだった。ドラマチックな転換も結末もなく、きっかり１５分でバスはやってきた。
プシュー。エアーの吐き出される音と共に、バスの乗降ドアが開く。わたしは、右手にピアノ、左手にボストンバッグを抱えてタラップに足をかけ、ゆっくりと上り振りかえる。先生は、両手で頭をくしゃくしゃとかき回している。
「ありがとうございました、先生。」
「いえ、こちらこそ・・・って、なんか変だな、ハハハ。」
「また来ます。」
「いや、ここはもう来るところではありません。」
「でも、来ます。」
「いや、それは主治医として困ったりもするわけです。」
「だって・・・。」
「あと、半年待ってください。僕もけりをつけますから。」
「・・・待ってていいのですか？」
「はい。ぜひに・・・YES・・・です。」
そう言うと、両腕をまっすぐ空に向けて掲げピースサインをわたしに送った。かっこ良く・・・はなかった。かっこ良くはなかったけど、信じてもいいのだと確信出来た。わたしは、ピアノと荷物を抱えたまま胸の前でダブルピースを先生に送った。
「YES！」

半年を２ヶ月だけ過ぎたけど、M先生は約束どおり退所してきた。退所してくるまでの８ヶ月間、わたしはスクリャービンを弾き続けた。M先生の言うところの解釈すべき余白を一つ一つ紐解きながら８ヶ月を過ごした。そして、自分なりの解答を得た。
“余白の中には何もない。雲ひとつない青空みたいなものだ”
気がついてしまえば当たり前のことなんだけど、余白に込められた意味を探そうとすればするほど深みにはまる。そこは意味を探すところでなく、自己を投影出来る場所であり、自由に泳ぐべきところなのだ。スクリャービンは、壮絶に複雑なキータッチを強いれば強いるほど、演者は無心になれはずだと思って、ピアノ・ソナタ第７番・白ミサを作ったのではないだろうかとも思う。
余白は余白のままにしておくことが、失わないことなのだ。

Ｍ先生の退所から半年後、わたしたちは入籍した。若い紫陽花の花が梅雨空から降る雨音をはじく路地・・・一本の傘を高く掲げて歩いて行った。頭をくしゃくしゃするのを我慢するために、左手で右手をがしりと押さえながら言ってくれたプロポーズの言葉は、内緒。
もうすぐＭ先生が仕事から帰ってくる。今日は、はじめての結婚記念日だ。キッチンからは、ビーフシチューを煮込んでいる鍋のグツグツ音が、幸せなリズムを刻んでいる。わたしは、その音を聴きながら、木板のピアノを弾く。
夕暮れ時のしとやかな空気は、ゆったりとわたしとＭ先生だけの時間を繋ごうとしてくれている。

      
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   <title>AIR SILKY Ⅱ</title>
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   <published>2008-04-25T05:13:21Z</published>
   <updated>2008-04-25T05:34:56Z</updated>
   
   <summary> 5年前のCross FM、期間限定でオンエアされた番組があった。 番組タイトル...</summary>
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      <![CDATA[<a href="http://www.airsilky.com/a2.html" onclick="window.open('http://www.airsilky.com/a2.html','popup','width=1075,height=1381,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://www.airsilky.com/a2-thumb.jpg" width="249" height="320" alt="" /></a>

5年前のCross FM、期間限定でオンエアされた番組があった。
番組タイトルは【Air Silky】。
"Less talk & More music"を軸に音楽と写真で淡々と進行していくその番組は
もはやラジオというフォーマットを使ったアート作品だった。
その後、【Air Silky】は、仕掛け人である木本和久(CROSS FM/ELE-TOPIA)と
木寺一路(フォトスタジオFU.)によって、活動の場を拡げる。
ラジオだけに止まらず、ソラリアプラザでの個展、
アップルストアやクラブでのイベント開催などを続ける中で
写真と音楽のほかに映像や短編小説による作品も発表していった。
昨年、それらの作品を集めた写真＋小説本を【Air Silky】としてリリース。
その独特な世界観に共感した多くの人から次回作を待つ声を聞く。
そして、休むことなく第2集を2008年4月末に出すことになった。
今作は、すべて新作の短編小説と撮り下ろしの写真たちで綴られている。
この1冊の本は、きっと・・・にちがいないと確信している。



《 発売日延期のお知らせ 》

2008年4月末の発売を予定しておりました「AIRSILKY Ⅱ」の発売日を
変更させて頂くことになりました。
正式な発売日が決まりしだい、このサイトでお知らせしますので
いましばらくお待ち下さい。

なお、メールにて発売日を知りたい方は、お手数ですが
下記のアドレス宛にお知らせ下さい。
発売日が決まりしだい、ご連絡させて頂きます。
<a href="mailto:info@airsilky.com">info@airsilky.com</a>

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   <title>AIRSILKY【書籍版】発売のお知らせ。</title>
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   <published>2007-08-18T09:08:23Z</published>
   <updated>2007-08-20T11:25:45Z</updated>
   
   <summary> 2002年にクロスFMの特番として始まった『AIRSILKY』 DJ・木本和久...</summary>
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      <name>airsilky</name>
      
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      <![CDATA[<a href="http://www.airsilky.com/airsilky01.jpg"><img alt="airsilky01.jpg" src="http://www.airsilky.com/airsilky01-thumb.jpg" width="300" height="205" /></a>

2002年にクロスFMの特番として始まった<strong>『AIRSILKY』</strong>
DJ・木本和久のミックスに写真家・木寺一路の作品をWEB上で観ながら楽しむという初期のスタイルから、"文章"と"写真"によるブログでの作品発表、さらにクラブイベントへとその枠を広げてきました。

今回は初の書籍版『AIRSILKY』として過去、発表された作品の中から特に人気が高かったものを加筆、修正。さらに木寺一路の写真作品を多数収録しています。　

<strong>『Airsilky』 </strong>
文・木本和久　写真・木寺一路　 

価格3000円 

8/24におこなわれるFUの6周年パーティでは、Airsilky本の先行発売を行います。 

※インターネットでの購入はこちらからどうぞ。 

<a href="http://www.honninaru.com/web_order/publish/market/shousai.cfm?b=30002497">購入ページへ</a>


2007.8.24(Fri) 

『Fu. 6th Anniversary @ Megahertz』 

Open 21:00～ 

DJ Permanent / Kazuhisa　Kimoto /Jimi / DJ 拾萬円 

VJ　濁犬 

Live act　濱砂雅哉＆YUKO 

charge　1500円(W/1drink) 

Megahertz：北九州市小倉北区紺屋町7-17 ダイヤ会館2F 
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   <title>203号室のインコース</title>
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   <published>2007-03-16T06:09:45Z</published>
   <updated>2007-03-16T06:10:24Z</updated>
   
   <summary> 僕はひとつのことを思い出そうとここに入所して1週間が過ぎた。 インコース低めの...</summary>
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      <![CDATA[<a href="http://www.airsilky.com/203.html" onclick="window.open('http://www.airsilky.com/203.html','popup','width=800,height=640,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://www.airsilky.com/203-thumb.jpg" width="300" height="240" alt="" /></a>

僕はひとつのことを思い出そうとここに入所して1週間が過ぎた。

インコース低めの打ち方だ。

 

『禅ビル』…僕らはそう呼んでいる。
街の中心からやや外れた5階建ての古いビルで、一部のプロ・アスリートたちが利用する。
僕は、あるプロ野球球団の3番バッターだ。昨シーズンの終了間際、極度の不振に陥りそのままシーズンを終えた。原因は、分かっている。
インコース低めの球をすくい上げて打ち返すフォームを忘れたのだ。

もっとも得意なコースだったはずのものが狂うと、すべてがバラバラになる。

そして、すべてがバラバラなままオフシーズンに入った。
それを思い出すために、ここにいる。

 

『禅ビル』の外見はいたって平凡だ。しかし、その中に入るといささか様相は変わる。徹底的に無音状態に近づけているのだ。防音はもちろん、特殊な吸音材が壁一面に吹き付けられていて、あらゆる音が瞬時に吸い込まれる。足音ひとつとっても、ここで聴くそれは異質なものだ。音の芯の部分だけが聴こえ、それを取り巻く反響音がないからだとのこと。そんな空間で、僕らは忘れたフォームなどをひとつひとつ組みなおしていく。
今朝、退所したボクサーは、左ジャブから右フックのコンビネーションで使う、背筋にかかる緊張状態が左から右へ流れ移るポイントのようなものを思い出すためにここにやってきた。そして、すっきりした表情で1ヵ月後に控えたタイトル戦へ向かった。

ここはそんな場所だ。



さて、僕のインコース低めを打ち返すイメージを書き抜いてみる。

ピッチャーの指先からボールが離れるほんの少し前に、バットを持った左手のグリップを内側に軽くしぼる。
ボールの軌道を腰の左前方から巻き込むイメージで眼で追う。
左足をいつもどおりのオープンスタンス気味にステップを踏みだす。ただし、つま先の方向だけは開かず、膝から上の筋肉と腰の筋肉を結ぶラインに緊張を持たせる。その際、まだ腰の回転を始めてはいけない。つまり、上半身は残したまま、下半身だけを巻き上げるのだ。
ここまでの動作を終えた時点で、ボールは約3分の2進んでいるはずだ。
手首を固定したまま、バットの移動を始める。
左腕を前方に少しだけ移動させた後、肘を支点に最短距離でボールに到達するようにバットを回転していく。
この動きはごくわずかであるべきだ。本格的なバットの軌道は、上半身の回転がスタートした後に描かれることになる。
つまり、あくまで回転させるのであって、振ってはいけない。
回転を始めてすぐ、ねじった状態にある下半身に上半身が追いつくように委ねていくわけだが、その際、腹部を意識するとほんの少し前のめりになることがあるので、背中に集中して脊柱と左足の大腿骨が真っ直ぐ結ばれるように上半身を回転させる。
上半身の回転が、5分の2程度終えたら、本格的にバットをボールに向かって振り始める。
インコース低めの球は、身体を開いた状態でややおっつけ気味にバットを持っていくのがポイントだ。
振り始めてしばらくは手首から先だけ残す。そして、上半身の運動が半分を超えたあたりから、遅れた手首を上腕部の動きに追いつかせる。
そうすると硬いバットがしなるような感覚を覚える。
そして、手首、腕、腰がかっちりはまるべきポイントにはまったら、その3点を結んだラインにエネルギーを流し込む。
打ち返すボールの軌道が高い放物線を描きたい場合は、バットにボールを乗せ、バットのしなりを利用して前方に運び出すイメージ。
ゴロやライナー性の当たりを狙う場合は、ボールを日本刀で真っ二つに斬るイメージ。
大きく分けると、このふたつを使いわけるのだが、どちらもボールがバットに当たるインパクトの瞬間、ほんのごくわずかだけ肘から先を前方に移動させる。
そうすることにより、もともとイメージしていたインパクトのタイミングよりも、2センチ程度前でボールを捉えることが出来る。
このようにする理由もちゃんとある。
ボールがバットに当たり、バットがその力を吸収し、蓄えたエネルギーをボールに与えて、そのボールが打ち返されるまでの時間は、瞬時でなく意外と長い。
ボールがバットに当たる瞬間に向けてバットを振りはじめたはずだ。つまり、そのまま動作を続けると、バットにボールが当たった瞬間に最大のエネルギーをバットの芯に伝えることになる。
当たった瞬間が最大のエネルギー供与ポイントだとすると、、その後バットからボールが離れるときにはそのエネルギーはかなり減っているはずだ。
バットにボールが当たる瞬間に大切なのは、そのエネルギーの大きさではなく、ボールの芯とバットの芯の位置関係だ。バットの芯をボールの中央から5ミリ程度下に持ってくることが大切なのだ。
エネルギーの大きさが問題になるのは、その後なのだ。
だから、バットがボールを捉えたそのときでなく、ボールのエネルギーを吸収しきった後に最大のエネルギーが供給出来るように、インパクトのポイントを予定していた位置より少し前にずらす。
そうすると、最大のエネルギーをボールに伝えるタイミングは、その分だけ遅れてやってくる。
あとは、バットを背中に巻きつけるように身体全体で振りぬく。
そうすれば、必ずボールは燕のように空間を移動してくれる。

この一連のイメージを音のない２０３号室で、一日何百、何千と頭の中で繰り返す。
今日で4日目。
全体の６０パーセントくらいは、それぞれのイメージがスムーズに繋がってきた。
しかし、「ボールがバットに当たるインパクトの瞬間、ほんのごくわずかだけ肘から先を前方に移動させる。」
ここがどうもうまくいかない。
肘から先だけでなく、上半身全体で動いてしまうのだ、頭の中で。
打つ瞬間に上半身がぶれると、ポップフライに終わってしまう。

 

窓の向こうは今日も雨。

ゆっくりゆっくりやればいい。

ピッチャーはいつものあいつだ。

ゆっくり振りかぶって、インコース低めをついてくる。

ハイビジョン映像をごくごくゆっくりのスローモーションで回したときのように、ボールが僕に向かってくる。

眼を閉じたままの僕の頭の中では、左手のグリップを握り締めた自分がスタートした。]]>
      
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   <title>AIRSILKY @Megahertz</title>
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   <published>2007-03-13T07:15:14Z</published>
   <updated>2007-03-13T08:34:02Z</updated>
   
   <summary> 毎月第２火曜は、AIRSILKY@Megahertz!! 2007.3.13 ...</summary>
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毎月第２火曜は、AIRSILKY@Megahertz!!

2007.3.13 PM9:00～　

DJ 木本和久　DJ パーマネント

PHOTO　木寺一路

VJ　濁犬

Megahertz   北九州市小倉北区紺屋町7-17　ダイヤ会館2F  
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   <title>暮石犬吾写真館2001-2006 L-Edition発売</title>
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   <published>2007-03-05T07:45:42Z</published>
   <updated>2007-03-05T15:37:59Z</updated>
   
   <summary> VJ濁犬の暮石犬吾のサイト暮石犬吾写真館が本になりました。 『暮石犬吾写真館2...</summary>
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      <![CDATA[<a href="http://www.airsilky.com/kengo1.html" onclick="window.open('http://www.airsilky.com/kengo1.html','popup','width=400,height=300,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://www.airsilky.com/kengo-thumb.jpg" width="300" height="225" alt="" /></a>


VJ濁犬の暮石犬吾のサイト<a href="http://www.famousundergrounds.com/ring/kenkore.html" target="_blank">暮石犬吾写真館</a>が本になりました。

『暮石犬吾写真館2001-2006 L-Edition』

暮石犬吾　著
80ページ ( カラー 8ページ モノクロ 72ページ )　サイズ　A4
本体価格　3,024円　（税込）


<a href="http://www.honninaru.com/web_order/publish/market/shousai.cfm?b=30001870" target="_blank">購入はこちらから</a>


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   <title>スウィート・ストーム</title>
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   <published>2007-03-03T07:30:44Z</published>
   <updated>2007-03-04T06:07:02Z</updated>
   
   <summary> 海暮れて鴨の声ほのかに白し （うみくれて かものこえ ほのかにしろし）  松尾...</summary>
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      <![CDATA[<a href="http://www.airsilky.com/10015026716%5B1%5D.html" onclick="window.open('http://www.airsilky.com/10015026716%5B1%5D.html','popup','width=800,height=640,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false"><img src="http://www.airsilky.com/10015026716%5B1%5D-thumb.jpg" width="300" height="240" alt="" /></a>


海暮れて鴨の声ほのかに白し
（うみくれて かものこえ ほのかにしろし） 
松尾芭蕉


久々の連休だ。それも3連休。このぽかりと空いた3日間を何をして過ごそう。
まずは、恋人のサコに連絡してみた。「急なんだけど、仕事を休めたりしない?」「え?どういうこと？」「実は明日から3日間の休暇をもらったんだ。」「へぇ珍しいこと。ちょっと待って。スケジュールを確認してみる。」彼女は受話器を置く。受話器から遠ざかり、ドアを開け、そして小走りで近づいてくる彼女の足音が聴こえてくる。多分、素足だ。僕は、缶ビールのプルタブを開けた。僕らは、出会いってから5年になる。僕はイベントのプランナー兼ディレクターを、彼女はＭＣ業を生業としている。お互い、フリーランスなので土日に休めることは少ない。そのかわり平日に休んでいるかというとそうでもない。１ヶ月間無休のこともあれば、１週間仕事をせずに過ごすこともある。そして、二人の仕事が同時に休みになることは滅多にない。5年間で１６回だ。彼女のスケジュール帳にグリーンで記された回数。
「ごめん。仕事はなんとかなるんだけど、ちょっと無理そう。」
「そうか。急だもんね。」
「明後日、釜入れなの。２日間眠らずに火の番よ。」
「そうなんだ。１年に２回だけのイベントだったね。」
「そう。今回は、はじめて花器に挑戦したのよ。それも巨大なやつ。あなたでも持ち上げられないと思うわ。」
「花を活けるのか。」
「うまく焼けたらね。実家にある桃の木と山々の木々を組みあわせてみたいの。」
「うん、それはいい。」
「そのときは手伝ってね。大きなリュックサックを二人で背負って山に入り、探検よ。」
「了解。」 
「ところで、わたしが休みだったら何をする予定だったの？」
「大阪に行ってみようと思ってた。」
「どうして？」
「出会って間もない頃に二人で行った店で明石焼きを食べようかなと。」
「また三日三晩？」
「そう三日三晩。」
「裸電球ひとつの屋台。」
「そう、あの屋台で。あの明石焼きはあそこでしか食べられない。」
「寒さに耐えながら。」
「そう、５年前と同じように寒い寒いと言いながら。つゆを飲み干したら、おかわりしてね。」
「いいわね。心が揺れている。行きたい。」
「だめだよ。サコは窯に行きなさい。」
「ひどい。」
「ひどくない。サコには窯がある。今の僕には何もない。」
「一人で行く？」
「うーん。どうしようか迷っている。」
「じゃあ、わたしから素敵な提案。」
「ん？」
「フェリーで行くといいわよ。」
「フェリー。」 
「そうフェリーで行くの。わたしは、高校を卒業するまで大阪に住んでいたでしょ。父親の実家がある小倉に来るときは、いつもフェリーだったわ。」
「ふむふむ。」
「運がよければ、不思議な音を聴くことができるのよ。」
「どんな？」
「うまく説明できないけど、細く透きとおった音。真っ暗闇の海のどこからか聴こえてくるの。かなり集中して聞かないと聞こえないくらい小さな音。振動と言ったほうがいいかも。」
「振動か。それは、おもしろそうだね。」
「おもしろいかどうかは微妙だけど、あなたはきっとおもしろいと思ってくれると思う。ただ、いつも聴こえるわけではないから、聴けなかったからといって恨みっこなしにしてね。」
「もちろん、恨んだりしないよ。それで、聴ける確立はどれくらいなのか。」
「そうね。わたしの場合で３０パーセントくらいかな。それ以下かも。」
「この寒い時期、フェリーの甲板で夜中の間じゅう一人で耳をすませて待つ．．．聴こえないかもしれない不思議な音のために。なんだか、過酷だね。」
「そう過酷よ。でも、それだけの価値があるのよ。少なくともわたしにとってはそういう音。」 
「音そのものが好きな僕にとって、魅惑的な話だな。行ってみようかな、フェリーで。だけど、その細く透きとおった音の正体は何なんだろう？」
「それが正体不明なの。家族と一緒に聞こうとしたことがあるんだけど、わたしに聴こえても他の誰も聴こえないって言うし。だから、フェリーの船長さんのような人に聞いたことあるの。」
「ほうほう。」
「船長さんが言うには、そのことを尋ねてきたのは私で４人目らしいの。フェリーの仕事に就いて２５年と言ってたから、膨大な乗客の中での４人ということはかなりの貴重な体験よ。そういう風に言ってもらった時は、なんだか誇らしい気分になったわね。そして、その船長さんもその音を聴いたことがないんですって。でも、その音は、その近辺を運行する船乗りの間では有名だとも言ってたわ。滅多に聴けることのない音なんだけど、船乗りさんたちの中にも聴いたことがある人がいるんだって。」
「じゃあ、確実に存在する音なんだね。」
「多分ね。それで、船乗りさんたちの間では、“スウィート・ストーム”って呼ばれているらしいの。」
「“スウィート・ストーム”…なんだか、かっこいい呼び名だね。」 
「そうね。スウィート・ストーム…直訳すると“甘美な嵐”。船乗りさんたちとしては、船の航行中に起きるイレギュラーの出来事は、なるべく避けたいと思うらしいの。当然よね、海の怖さを一番知っている人たちだから。“スウィート・ストーム”のようななくても全然困らない正体不明の音なんて気味が悪いだけだもの。だけど、不思議なその音は、一度聴くと何度も聴きたくなる。心地よいイレギュラーなの。それで“スウィート・ストーム（甘美な嵐）”と呼ばれるようになったらしいのよ。」
「ふむふむ。なんかワクワクしてくる話だね。決めた。行ってくる。」
「いってらっしゃい。“スウィート・ストーム”に出会えるといいわね。正体が分かったら教えてね。」 
僕らは、それからとりとめのない話を５分くらいしてからお互いの時間に戻った。
“スウィート・ストーム”を聴くことができるだろうか。聴いてみたい。 
インターネットを使って調べてみると、フェリーは今晩出発の便があった。あと、２時間だ。まずはシャワーにかかろう。バスタブに腰を下ろし、シャワーの温度を調節してから頭を垂れた自分の後頭部に向かってお湯が当たるように固定した。そして、そのまま１２月の洋上、息を殺してじっと待つ自分を想像してみた。
　シャワーから出るお湯は、僕の頬を伝い排水溝に吸い込まれていく。その行き先は、もしかすると僕と同じかもしれない。 ]]>
      
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   <title>無題</title>
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   <title>あの森の向こうへ駆け抜けろ</title>
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   <published>2007-02-21T10:02:12Z</published>
   <updated>2007-03-04T10:02:50Z</updated>
   
   <summary> この雨の向こうには、もう一人の僕がいる。 僕は土砂降りの雨の中を一人走っている...</summary>
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この雨の向こうには、もう一人の僕がいる。

僕は土砂降りの雨の中を一人走っている。かれこれ１時間は走っているはずだ。不思議と息は切れない。銀色のナイキのスニーカーは、水と泥を吸ってそれはまるで汚れたギブスのように僕を試すように重くなっていく。

目的地は、この森をぬけたところにある音楽堂だ。森は僕が住むシャッター通りが駅前に鎮座する街のはずれにある。江戸時代にときの権力者を接待するためにつくられ、その後、幕末に開国をよしとしない浪人たちが潜伏、最後に集団割腹をしたという悲哀に彩られた場所だ。小さなな森であるけど、きれいに整備され、真夏になってもそこだけひんやりとしている。タバコを吸うのをためらってしまうような凛とした空気が今も昔もそこにある。
その森では、５年前より毎夏、ロックフェスが開催される。とは言っても、海外から大挙してミュージシャンが来たり、旬のロックバンドがジュークボックスように競演するような大きなものではない。この街出身のオールドプレイヤーたちが帰ってきてライブをするのだ。
昔々、この街の不良たちはこぞってロックンロールで自己主張したそうだ。かわいい女の子を振り向かせるために、彼らはエアコンなんかない山の中腹にあったガレージに入れ替わり立ちかわりギターをかき鳴らし、海の向こうへ吼え続けていたとのこと。
そんな彼らはほどなくして、２０年前の日本のロックシーンを切り拓くことになる。そして現在もなお生き様としてロックしている。まさに真のアーティストたちだ。
僕の中学生時代の大半の時間を占有していたのは、まさに彼らの音楽たちだった。
それらは、キラキラしていたしギラギラもしていた。

ここ数年間、僕の頭の大半は、いつもイライラしていた。仕事で良い成績を残しても、きれいな女の子と一緒にベッドに入っても、バイクに乗って時速２００キロを超えても。まるで、ヘドロの海につかっているような毎日。
そして３ヶ月前、コンビニで支払いを済ませるように勤め先の会社へ辞表を出した。特に揉めることも慰留されることなく受理され、それからちょうど１０日後に１０年間勤めた会社に行かなくてよくなった。コンビニはレシートをくれるが、会社がくれたのは１０年間分の虚無感だけだった。
『失われた１０年』というフレーズをどこかで聞いたか、読んだかした覚えがあるが、僕にとってまさにそういうことだ。
ただ、リセット出来たような気がそのときはした。
帰りに車の中で、中学時代につくった今じゃテープも伸びてノイズだらけのマイ・ベスト・トラックスを繰り返し繰り返し聴いた。うんと遠回りして。

だけど会社を辞めても、イライラ感はつのるばかり。部屋から出ても出なくても、僕は僕自身で変わりなく、僕の問題は何も解決しないことに気づいた。僕の問題は、根が深いのか、それとも根無しなのか。

いつのものように昼前に起きて、まずは１本のタバコに火をつける。１１階の僕の部屋にあるただ１箇所の窓を２センチだけ開け、ほんの少し冷たい風を頬に感じ、さて今日はこれから何をしようと漫然と考えていた。
すると、遠くの方から音が聴こえた。聴こえたというより、かすかに鼓膜がふるえた。鋭利なカッターを振り下ろしたときのような芯のある風がこの部屋を通り抜けようとする。風は、ベッド脇の壁を跳ね音をたてた。ヒュッ。
風は、枕元に丸まったまま置かれていたフライヤーをほんの少しだけ震わせ、その頭を起こした。そして、ゆっくりゆっくり元の位置に横たわる。それは、今日から明日にかけて行われるロックフェスのフライヤーだった。
タバコに先で行く先を決めかねていた灰は、ベッドの上を舞い上がりスパンコールのように僕のまわりを舞い降りていく。
そして、もう一発、今度ははっきりと遠くの方からの地鳴りのようなバスドラを音が窓の隙間から僕を打ち抜いた。
耳の奥で捕らえたロックンロールの咆哮は、僕の心にあったさびかけた鍵穴の汚れをブワッと吹き飛ばしてくれたような気がした。
あの山の麓に行かなくてはいけない。行くんだ、今すぐ。

エレベーターを使わず、一気に非常階段を駆け下り外に出た。
暴力的な夏の太陽の日差しで僕は一瞬気を失いそうになる。しかし、真っ白な光の中降る土砂降りの雨が僕を正気に戻してくれた。
バイクのキーを土砂降りの雨に中、ギラギラと輝く太陽に向かって放り投げる。どこまでもどこまでも高く。
僕は３度の屈伸と、大きな背伸びの後、全速で道路のど真ん中を走り始めた。走り始めてすぐに背後にキーが地面に叩きつけられる音がした。
それは、遅れて鳴った号砲だ。僕は、走った。２０年ぶりに走った。

森に入ると、バスドラの振動が木々をその根元から揺らし、さらに走ると歪んだギターの音が樹皮を剥ぐ。
それらは僕が何度も何度も聴いたあのカセットテープに入っている曲たちだった。
僕は走る。あの頃に走り方を思い出しながら走る。
走りきった場所にあるステージでは、あのロックスターが唄っているはずだ。


はじまりも終わりもない、僕らにあるのはいつも道半ば

だから満ち足りたことなんか一度もない

あるのは、いつもコップ１杯の水



この雨の向こうには、もう一人の僕がいる。
走れ、走るんだ。
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   <title>テンニョヒダ（加筆・修正版）</title>
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   <published>2007-02-15T10:03:27Z</published>
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   <summary> いつも何かに包まれていたいんだとあの人は言った。 わたしは、水産加工物を扱う小...</summary>
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いつも何かに包まれていたいんだとあの人は言った。



わたしは、水産加工物を扱う小さな会社のOLをして１２年になる。

就職してすぐにはじめた定期預金は、何度か満期を繰り返した。それは、自分の結婚準備金のはずだった

けど、あの人の言ったあの言葉が私を別の方向に導いた。

半ば強制的にとらされる休日の朝、定期預金を解約し、その足で適当な１０坪ほどの中古のワンルームマ

ンションを購入した。

わたしは、そこを二人だけの『カプセル』にしようと思った。

壁という壁すべてを取り払い、配管工事もやりなおして、部屋の真ん中にバスタブを配置した。

ただのワンルームマンションをまるっとバスルームにしたのだ。他に無駄なものは一切置かない。

こことは別に会社の寮に契約しているので、日頃はそこで生活する。



取引先の営業マンFと深い関係になったのは、２年前の桜が咲き始める時期だった。

どちらかというと、わたしの方から誘った。

Fは、３９歳の妻子持ちでいつも森林系のにおいがするオーデコロンをつけている。

わたしが、Fを意識するようになったのは、F本人よりもそのオーデコロンのにおいが先だ。

そのオーデコロンの正体を知りたくて、Fに尋ねたのがきっかけでほどなくわたしたちは深い関係を持っ

た。

わたしにとって、はじめての恋愛。

Fにとって、はじめての不倫。

月に一度ペースで、食事をしてセックスをする程度の付き合いだったが、包み包まれ、溶けそうだった。

そして寮に帰ってきてもFのつけているオーデコロンはわたしをゆるやかに緊縛してくれていたし

その緊縛は、翌朝の目覚めまで感じることが出来た。

その朝だけは微かな罪悪感を伴うオーガニズムの後、出社の準備をはじめる。

いつもよりも長い時間をかけて髪の毛をブローする。


Fがまとっていたオーデコロンが生産中止になったのを知ったのは、たまたま見たインターネットのホー

ムページだった。そのオーデコロンに含まれる成分の調達が困難になったのが原因らしい。

俗名『テンニョヒダ』という苔の一種で、その苔が絶滅危惧種に認定されたとのこと。

採取不能になった『テンニュヒダ』なしでは作れないとのことで生産が中止されたのだ。

わたしは、すぐにオーデコロンの輸入代理店を探し出し、連絡をして在庫をすべて買い取った。

またそこと取引のある問屋やショップを紹介してもらい、買い占めた。

国内にあるだろう在庫は、１ヵ月半かけてほぼすべて入手した。

Fの驚き、喜ぶ顔を思い描いては、電話をし、メールを送り、購入するための送金をせっせと続けた。

集まったのは、１１５本。Fにとって、一生分あると思う。われながら、よく集めたものだ。

また、同じ時期に購入したマンションは、バスルームのみのワンルームとなる工事も終えた。



ふたつのことを終えた週末、わたしはFを新しい部屋に招いた。

オーデコロンを集めたことも、部屋をバスタブのみが鎮座するカプセルに改装したことも内緒にして。



Fは来なかった。

かわりに奥さんから、わたしの携帯に電話があった。

「そちらには行きませんので、よろしく。」

グチャッと音をさせて電話は切れた。



わたしは、バスタブにはじめてのお湯を張り、全部のオーデコロンをバスタブの脇に並べた。

Ｆの好きな麻のセーターを脱ぎ、淡いグリーンの下着もとる。

不思議なもので、部屋の真ん中で脱げばいいものを、脱衣は部屋の端っこでしてしまう。

壁際で脱ぐ習慣は、スペースが広がっても変えられないちっぽけな自分が、少しだけかわいい。

かなり奮発したつもりの、ゆるやかなティアドロップタイプのバスタブに右足からつかり、一度だけ深く

身体を沈めて身体をひるがえす。

バスタブの脇には、整然と並んだ１１５本のオーデコロンがある。

１本だけ、キャップをはずしてみた。

湯気のくぐもりともに、Ｆを感じるにおいがわたしを包んだ。

もう１本あけた。

ここにいないＦに少しだけ近づけたような気がした。

さらに、新しい瓶…そして、もう１本。

次々にあけていった。バスタブの中にも入れた。垂らすのでなく、ドボドボと。

そして、１１５本目は頭からかぶってやった。

部屋の中は、湯気が充満し、オーデコロンの粒子がその隙間を埋めていているのが見えた。

その様は、Fと一緒に行ったプラネタリュウムで見たオーロラだ。

そして、そのにおいは何のにおいなのか分からなくなっていた。鼻をつんざく棘を化していた。

そういえば、『テンニョヒダ』ってどんな植物なのだろう。ふわふわしたイメージがする名前だけど…

棘があるのかのしれない。

ポロポロと涙が胸を伝う。

悲しみからなのか。

それとも、この部屋いっぱいのオーデコロンの刺激によるものなのか。

もうすぐ夜が明ける。

カプセルの中のオーロラは、その姿を変貌させながら移動させながら今にも消えてしまいそうだ。

わたしは、一生分のＦのにおいを一晩で使い切った。

Ｆのにおいは、この先わたしから消えることはないだろう。
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